「実証フィールド」になった市——戸田市はなぜ、日本の教育改革の最前線に立てたのか
「実証フィールド」になった市——戸田市はなぜ、日本の教育改革の最前線に立てたのか
#校務DX“普通の市”が、なぜ最前線に立てたのか
埼玉県戸田市。人口規模は特別大きいわけではない。それでもこの市は、長く日本の教育改革の最前線として名前が挙がってきた。けん引役は、2015年から教育長を務める戸ヶ﨑勤氏。国のGIGAスクール構想に先駆け、2016年からICT教育に踏み込んだ。
改革の合言葉は明快だ。「何もしないことが最大のリスク」「凡庸な90点の取組より、60点でも夢のある挑戦を」。掲げるのは「誰一人取り残されない教育」である。
具体的に、何をやっているか
戸田市の改革は、Subject・EdTech・EBPM(エビデンスに基づく政策・実践)・PBL(課題解決型学習)を柱とする。象徴的なのが産官学連携だ。Intel、Microsoft、筑波大学、慶應義塾大学など70を超える機関と組み、学校を“実証フィールド”として外部の知を取り込む。
データの使い方も具体的だ。「ケース会議」では各種データを持ち寄り、児童生徒一人ひとりの支援策を議論する。データは集めて終わりではなく、意思決定の場とセットで動く。生成AIへの対応も早く、令和5年(2023年)9月に教育向けの生成AI利用ガイドラインを、校務利用・授業利用の両面で整備。市のデジタル戦略部門も行政向けガイドを同時期に公表し、行政・教育の両輪で全国に先行した。
成果と、現場のリアル
働き方改革の数字も出ている。小中学校教員の在校時間は5年前と比べて約30%減り、県内トップクラスとされる。
一方で、現場の手触りは一様ではない。学校の口コミには「教育方針はしっかりしていて学力も育つ」という評価と並び、「教員の質にばらつき」「PTA行事が多い」「連絡が電話連絡網など旧来的」といった声もある。理念の先進性と、現場運用の更新スピードには、なおギャップがある。